シン・春夏冬広場

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ロシアは結局独ソ戦争から何も進歩していない

ニュースで連日語られているのは、ウクライナとロシアの戦争だ。正直こう連日繰り返し伝えられると、それ以外の問題は全くニュースとしては必要ないのではないかと心配になる。そして、こんな混乱に乗じてよく大切な法案が通ってしまったりするので、注意が必要だ。

 

僕のブログの中で度々取り上げているが、ロシア文学の名著としてアレクシェービチさんが書いた「戦争は女の顔をしていない」*1という証言文学がある。この中では戦争の悲惨さ、また戦争に従事した女性への差別を、当時の人達の証言をもとに文学へと昇華した氏の思いが込められている。女性の言葉で書かれた戦争は非常に生々しい戦争を物語っている。この作品の重要性がウクライナ戦争でより鮮明になる。その込められたメッセージをロシア国民に全く伝わってないのが、一体何の冗談なのだろうと疑いたくなる。

 

www.akinaihiroba.com

 

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第二次世界大戦でもっとも死傷者を出した戦闘をご存知だろうか。独ソ戦*2である。第二次世界大戦では多くの人民が犠牲になった。原爆を投下された日本の犠牲者は300万人と言われているが、ソ連は桁が違う。2700万人だ。ソ連の国民はこのときのナチスファシズムの思想にかられた者たちからの侵略を忘れていない。民間人が標的にされ、ソ連国民は激怒した。

 

ニュースでロシア国民の言葉で違和感を持つのは、常にこのファシズムナチスから攻撃を受けているという過剰なまでの反応だ。プーチンの支持率は83%と言われており、進行を開始する前より10%ほど高まっているようだ。ウクライナへ進行しているはずのロシアが、ナチスファシストからの侵略を受けているという話の齟齬が起きている。それくらいロシア国民にとって、ナチスファシストからの侵略行為というのは許せない現象なのだ。そのため、侵攻しているロシアがウクライナを開放させるという図式になっている。これは実は独ソ戦争の際の国民感情と全く同じだ。ドイツからの侵攻に対し、国民全員が立ち上がり、女性までも戦いたいと自ら志願し、戦場に赴いていることが「戦争は女の顔をしていない」には克明に、そして何度も何度も書かれている。異様とも言える。全く盲目的にプーチンの言葉を信じている国民がいる。

 

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そもそもなぜロシアがウクライナを進行したいのかというと、地政学で説明がつく。地政学において重要なのはランドパワー【陸地的な有利性】とシーパワー【海域的な有利性】*3を確保することに尽きる。ロシアと国境が接しているのはバルト三国エストニアラトビアリトアニア】、ベラルーシウクライナだ。ロシアは社会主義国だが、ある程度の資本の自由は認めている複雑な状況だ。だが、基本的には独裁性に近いので、中国とは思想が似ている。ウクライナはかつてソ連領だったが独立を果たし、ヨーロッパ諸国の影響を強く受けている。民主主義の思想や、表現の自由が確保されている。状況としては香港に似ている。ロシアにとってはその国境が接している国が民主主義に侵されている状況というのは避けたい状況という認識だ。その状況を打破するために、クリミアを制圧し、そして今回ウクライナの侵攻を行っていると考えられる。

 

独ソ戦争では、ソ連は侵略を受けている側だった。その侵略における凄惨な状況は「戦争は女の顔をしていない」に克明に記されている。あらゆる家族が悲惨な状況に陥り、嬲られ、殺された。戦争に従事したはずの女性は、男性とは異なり猛烈な差別を受けた。自分たちが受けた傷を人一倍認識しているはずだった。

 

だが、今回は違う。今回のロシアはウクライナを侵略している。そのなかで殺戮を繰り返し、国際法で禁止されている民間人にまで牙を向けている。その状況をフェイクニュースだと考え、自国の矛盾を考えず、ヨーロッパ諸国のニュースを嘘だと断じている。かつて自分たちが受けた傷をウクライナに対して行っているのである。この大いなる矛盾に国民のほとんどが気づかず、プーチンを盲目的に信じる状況を見て、ロシアという国は全く成長のない哀れな羊たちの群れだと表現せずにはいられない。彼らは自ら考えることをやめてしまったのだ。自分たちが受けた傷を何も考えることなく、何も学ぶことなく他国に押し付けている。悲惨としか言いようがない。たとえ戦争が集結したとしても、ロシアという国を信じることは今後一切できないだろう。そのくらいロシアの行っていること、行ったこと、そして国民が止めるという自浄作用がない国など全く信じるに値しない。

 

 

 

 

 

 

 

*1:ロシア文学ノーベル文学賞を受賞している作品。100分de名著の紹介があったり、漫画化されたりと最近ホット

*2:第二次世界大戦ではソ連の首都モスクワで開戦したこともあり、かなり侵攻された状況だった。それもそのはずで、独ソ不可侵条約があったのである。一方的な破棄のもと開始された。もっとも厳しい状況だったのはレニングラードという都市戦だ。

*3:地政学というのは例えばなぜ沖縄に空軍基地が必要なのかといったことまで答えてくれる学問。日本は島国なので、シーパワーが強くあまり意識されていないが、陸軍、海軍、空軍の配置や、防衛を考える上で必要な学問