シン・春夏冬広場

楽しいことになんでもやっていこうっておもってますぜ。

菜箸

お題「みんなが経験した怖い話」

 

みんななかなか面白い話を書いてくれている。怖い話はやはり面白い。なぜか海外では落武者の霊は出没しない。日本には色々な霊が存在している。これは文化とか、宗教上の理由から違いが色濃く出ていると思われる。まさに地域に根差した話なのだろう。しかし生物が誕生してから3億年近く経過し、まさか人の霊だけが現世にとどまることはなかろう。幽霊はいまや人口よりも飽和し、道すがら幽霊をすりぬけ、昨日捕まえた虫が今朝消えているのは、きっと幽霊だったからだろう。

 

評論をかましながら、焦りを感じていた。言い出しっぺの自分が何も書いていない状況が寂しかった。なんとかして輪の中に入れないものか、何かないかと思い出を巡っているうちにふと思い出したことがある。

 

いつくらいだったろうか。息子が産まれる前の話なので、2-3年前のことだろうか。ある夜のこと嫁さんを少しでも孝行してやろうと、晩メシを作っていた。食材を切り終えて、フライパンを温めて、いざかき混ぜようとした段階で違和感に気づいた。

 

いつも菜箸を立てかけている瓶に、一本しか刺さっていなかったのだ。僕は菜箸を探した。よくガスコンロの裏側に入り込んだり、排水溝の中に突き刺さるのが好きなやつなので、いつものようにそうした場所に潜り込んでいるに違いないと探してもみつからない。

 

仕方がないので、しゃもじでもってかき混ぜて、夜ご飯を作った。食事の折りに嫁さんに尋ねた。菜箸がね。一本しかなくって、どこかで見なかったかねと。当然嫁さんもわからないと答える。

 

洗った折りに落としたのかとも思い、冷蔵庫の隙間や下を探してみても見つからない。瓶には相変わらず一本の菜箸が寂しそうに刺さっている。さすがに一本では使い道がないので、明日見つからないようであれば、新しいものを買ってくるしかないと考えていた。

 

朝になって朝食の準備を始める。瓶には菜箸が2本刺さっている。あれ?見つけてくれたのかなと嫁さんに尋ねた。いやいやしらんよ。全く触ってないし、見つけてもない。本当に知らない間に誰かが戻したんじゃないのって。

 

単純にものがなくなって出てきただけなんだが、誰も菜箸が戻ってきた状態を確認していない。つまり誰か部屋にいたか、何ものかが元に戻したことになる。家の中は本当に2人だけだったのだろうか。