シン・春夏冬広場

楽しいことになんでもやっていこうっておもってますぜ。

たまにある日常

やばい。パッと目が覚める。時計を眺めるとまだ5時だった。近ごろこんな感じで、夜は遅くに酒をあおって就寝し、眠りが浅いのか直ぐに目が覚めてしまう。持病などはとくに持っていないのだが、恐怖に駆り立てらるかのように目が覚めてしまう。とくに誰かから急いで仕事をするようにとか、期待を込めた思いを伝えられたわけではないのだが、何かに駆り立てられるかのように焦ってしまう。最近リモートワークが無くなったというのに、たいして周りの人と話したりしていない。恐怖の正体は周りから何も期待されていないかのような、得体の知れない脅迫だった。

 

子供の朝の支度をすませ、いそいそと自分の準備をする。今日朝の会議は何時からだったかと携帯の予定をみる。珍しく何もなかった。毎朝のように敷き詰められていた会社の予定はなりを潜め、今日話さなければいけないことに思いを巡らせていた現実から、何もしなくて良いという非現実的な安堵へと変わる。しまった。僕が何か設定しすれたのかもしれない。急いで会社に向かわなければと、再び頭を回し出す。荷物を持ち、車に乗り込む。快調なエンジン音をなびかせながら、会社へ急行する。

 

やけにスムーズに車が進む。いつもなら連なったヘビのようにどぐろを巻き、暴れ牛のように鼻息を荒くした車の群れがそこにはなかった。朝投稿する子供たちや、バス待ちをする女子高生達の姿もそこにはなかったのだ。そのいつもと違う道に違和感を覚えながらも前へと進める。いかに道がすいていようとも僕のやるべきことは変わらない。今日やるべきこと、明日始めるべきことを頭の中でぐるぐる考え出す。あの結果は今日共有しなければ間に合わないだの、いまある課題は話はじめないと終わらないだのそういったチームを運営するにはどのような手があるか悩みながら会社へと向かった。いつもの調子を取り戻し、なぜ道がすいているかなどには気持ちが向かわないように制御した。

 

会社につくといつもの守衛に挨拶される。そんな彼に向かって軽い会釈を返す。いつも挨拶してくれる彼に対して、自分としては感謝している。しかしながら、雨の日も風の日も繰り返される彼の挨拶に対して、自分はどうするべきだろうかと悩む。会釈だけで良いのか、それとも窓を開け、彼に向かって元気に挨拶すべきだろうかなど考えているうちに通り過ぎてしまった。

 

車を駐車場に停める。まだ朝早いのか車がまばらである。いつもこのくらいの時間はこんなものなのだが、それにしては少し車が少ないように感じた。僕は車で朝ごはんを食べる。食べてから車で向かいたいのは山々だったが、そんなことをすればヘビと暴れ牛の群れに捕まってしまう。僕にはそうする他選択肢がなかったのだ。早々に弁当を広げ、口へと放り込む。次々食事を口に運んでは、持参したスープで流し込む。食事は楽しみだが、朝に関しては作業に近い。息子のようにきゃはきゃは笑いながら、その日その日の食事をうまそうに食べることなど、久しくしていない。

 

朝飯を食べ終えると、いよいよ身支度を整える番だ。いつものロッカーの前に足を進める。無機質な金属がやる気を削ぐ。朝からかなり圧迫感があり、もう少しなんとかならないものかとまた別のことを考え始める。早く事務所に向かわなければ。早足で廊下を歩き、自分の席へと向かう。今日も一日頑張るぞ。だるかった気持ちを切り替えながら再び今日やるべきこと、話すことを考えはじめる。ぽんぽん。肩を叩かれた気がする。背後に気配を向けると後ろには上司の姿が。久々に話ができるのかとまた思いを巡らせた。おはようございます!挨拶をする。うん。おはよう。月の下くん、なんで会社にいるのかな?突然の思いもよらぬ質問に一瞬フリーズする。まさか知らぬ間に首になっていたかなどまたくだらない妄想をはじめる。いえ、仕事をしにきました。

 

そいつは結構だね月の下くん。

だがね…。

今日は休みなんだ。