シン・春夏冬広場

楽しいことになんでもやっていこうっておもってますぜ。

さらさらさら。

さらさらさら。

ふと目が覚める。雨だろうか。

ふと顔をあげて眉をひそめる。

昨夜みた天気予報は晴れとのことだったがあてにはならない。まさか降り出したのだろうか。カーテンからは一条の光が差し込んでおり、それだけでは晴れているのか、それとも雨が降っているのかはんぜんとしなかった。

 

僕はボォっとした頭を必死に回しながら昨夜のことを思い出していた。いずれにしても、カーテンを開けないことには何ひとつわからない。わかっているのは僕はどうやら目が覚めて来ていて、今は朝だという事だけだ。

 

むくりと起き上がり、シャッとカーテンを開ける。うわ。まぶしい。日の光が目に差し込み驚く。雨が降っているのではなかったのだろうか。外からは変わらずさらさらさらと雨が降っているような音が絶え間なく聞こえているらしかった。あたりをキョロキョロ見渡しながら、特に道路を見渡してみてもからりとしていて、雨が降っているような気配は感じなかった。さらさらさら。さらさらさら。よく目を凝らして音のする方向をにらみつける。さらさらさら。さらさらさら。風の音と共に葉っぱが流れて行く。茶色だか、黄色だか色とりどりの葉っぱが流されて行く。さらさらさら。どうやら枯葉が風に流されている音が、雨のように聞こえているらしかった。

 

せっかくの晴れ間である。僕は外に無性に出かけていきたい衝動に駆られる。ズボンをいそいそとはき、シャツを着ると、僕はのそのそとあるき、扉を開けた。影になっている場所は薄暗く、まだ生活音が聞こえて来ない。つまりだれもまだ目を覚ましていないのだ。ふふん。と鼻を鳴らし、僕1人がこの明るい世界に迷い込んだように、階段をゆっくり降りる。キョロキョロ見渡してもあたりにはひとの姿も気配も見当たらなかった。

 

さらさらさら。さらさらさら。

雨音のような枯葉が流される音が聞こえて来る。外は明るく、ぽかぽかしている。小春日和だ。空気はからりと澄んでいて心地よく、暑い日差しが肌を指す。のそのそと公園へと歩き出す。休日の朝は息子のベビーカーを押しながら散歩するのがおきまりだが、今日は1人だ。少しだけもの足りなさを覚えつつ、お決まりのコースを1人歩き出す。

 

公園に着くと、あたり一面紅葉している。黄色の葉っぱや赤い葉っぱがさらさらさら、さらさらさらっと音を立てている。のそのそと時計回りに公園の歩道を歩く。モクレンのつぼみを眺め、いつこの花は咲くのだろうかと眺める。立派な棘のようなつぼみが天に向かってにゅっと生えている。しばらく歩くと、今度はどんぐりだ。小さいのや、細長いのが帽子をかぶっている。小さいころは、どんぐりなんて下に転がっているものにしか目を向けてこなかったが、結構ごちゃっと生えているものなんだなと、どうでもよい感想を抱く。

 

キョロキョロとあたりをみわたす。休日息子と散歩しているときにはこのあたりのベンチに1人のじいさんが携帯片手にお笑い動画を見ていたのだが、今日は見かけなかった。暖かいとはいえ、めっきり寒くなってきた。きっといまごろは家でじっとしているに違いないと、そんなことを考えながら歩いて行く。

 

周りは木が生い茂り影が濃くなって来た。先ほどの柔らかな日差しがさえぎられる。さらさらさら。さらさらさら。びょうっと風が吹くと共に雨の音が鳴り響く。ぶるっとした。肌を冷たい空気が容赦なく突き刺してくる。寒い。周りは暖色が広がっているが、空気が冷たい。柔らかな暖かい場所から寒い場所に移動したため、より敏感に寒さを感じる。

 

いそいそと影を抜け出し、日差しの元へ飛び出す。ぽかぽかしている。なんだか眠くなってくるくらい温かな日差しが肌をなでるが、ときおりびょっと冷たい風が肌を突き刺してくる。もうめっきり秋である。