シン・春夏冬広場

楽しいことになんでもやっていこうっておもってますぜ。

生態系は各動植物とのバランスの中で育まれている

 

ギンリョウソウ【銀竜草】という植物がいる。別名ユウレイソウなどと言われており、きのこのように見えるが、腐生植物という多年草の一種だ。ツツジ科の植物である。名前はかなり厳しくかっこよいが、のっぺりとした透明な体躯がにょにょっと伸びていて、儚げに咲いている。まさに柳の下にいる幽霊のようだ。白いつくしのように見える。いささかつくしより太い。高さはそこまでではなく、地面から4~5cmほど伸びていただろうか。そのくらいの小さな植物だった。この写真は、たまたま栃木県宇都宮市の公園で撮影したものだ。そのときに初めてこの植物の存在を知った。そのくらい人の目に触れるのは珍しい植物と言える。

 

 

でかでかと看板と注意書きが印象的だった。見えにくいが看板の右上当たりの木のそばにひっそりと咲いている。この植物の珍しいところは、なにも出現そのものが希少というだけではない。この植物は、自分で光合成を行わない。葉緑体がないので、真っ白い見た目をしていると考えられる。土壌の菌類と共生関係を持ち、栄養を菌類から奪って生息している。菌従属栄養植物と呼ばれている植物の一種だ。それだけでも珍しいのだが、もう1つ奇妙な性質を持つ。この植物は、モリチャバネゴキブリというゴキブリに種を運んでもらい、菌類との共生関係を築いて発芽する。生きるために必要な行為のほとんどを他の生き物に委ねて生活している*1。この植物が生存競争の中で、なぜこのような生き方を選んだのか単純にはわからない。生い茂った森の中で、周りには自分より体高の高い植物に囲まれていたならば、光がないと生きてはいけない状況を捨てて、他者に栄養をもらうことを選んだ。そのようにすることで、わずかにしか差し込まない光に頼るよりも、快適な場所を見つけることができるし、繁栄も期待できるだろう。

 

ラジオをふと聞いていたときに、山にはクリンソウというきれいな花が一面に咲いているときがあるのだそうだ。普通に動植物に詳しくない人からすると、こうした群生地帯を発見したら、なんてきれいな光景に出くわせたのだろうと考えるに違いない。しかしながら、このクリンソウという植物には鹿にとって毒がある。もともとの群生地帯であれば、問題ないのであろうが、普段なかった場所にクリンソウの群生地帯ができていると、問題である。その問題とは、鹿による食害だ。日光には日光キスゲという黄色い水仙のような植物がいるが、この植物が鹿によって食べられてしまっている。あやめやショウブなども食べられてしまうようだ。キスゲの仲間ではこうした食害などにより、絶滅危惧種となってきてしまっている。

 

なぜギンリョウソウの話をし、クリンソウの話をだしたのか。それは動植物というのは大きな自然のシステムの中で機能し、生存していることとシステムの一端の不具合が発生していることを理解して欲しかったからだ。ギンリョウソウは菌類との共生、モリチャバネゴキブリとの共生という大きなつながりの中で生きている。菌類が大幅に減ったり、モリチャバネゴキブリが絶滅の危機に瀕すれば、それはギンリョウソウが駆逐されてしまうことを意味している。クリンソウの群生地帯の出現は鹿の繁殖によるシステムの変調の1つが表に現れてきている。その背後にはキスゲ、そのキスゲをもとに生活している虫や動物の一切合財が消滅する可能性を示唆している。

 

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以前水田の話を書き、昔の水田と今の様子はだいぶ変わってしまった話を書いた。本来生物の生存競争に負けて、絶滅してしまったということであれば、自然の摂理として仕方がない部分があると個人的には考えている。しかしながら、現在発生している動植物の絶滅危惧は自然の摂理によったものとはわけが違う。そのほとんどがわれわれ人の営みによって発生している。乱獲することによる水産資源の枯渇【マグロ、うなぎなど】、バラスト水による本来あるはずのない動植物の大移動【フジツボ、くらげなど】、食料目的の養殖による繁殖の増加【ウシガエル、コイなど】、あまみの黒うさぎを保護するために、天敵であるハブを食べるマングースを放ったところ、あまみの黒うさぎの数が激減してしまったなど、数え上げればきりがないだろう。

 

一見するとあまり大きな問題に見えないが、実際ただ生物の生存場所が変わっただけだろうと想像するが、そんなことはない。鹿の食害の話に戻るが、食害が進行するとクリンソウまで食べてしまうのだそうだ。小さい植物の一帯がいなくなると、今度は大きな木に影響を及ぼし始める。風雨により根が露出し始める。根が露出すると自重を支えきれなくなり、倒れてしまう。倒木が増え始めると、そのあたりに住む小動物たちがすみかをなくす。小動物が減ると肉食動物が餌を探しに人里まで降りてくるそうしたことが発生し始める。こうしたことがわかり始めてきた。倒木の話が現実か否かを確かめる方法がある。ウグイスだ。夏つげ鳥と呼ばれるウグイスが例年よりなく時期が遅れるならば、気温が上がらないなどと考えられるが、鳴き声を聴かなかったとあれば、林や森が失われてきている可能性が高い。

 

生態系はひとつひとつは小さい集団の集まりだ。その生態系のバランスが崩れると、システムとして機能していたものが破綻をきたし、すこしずつ僕らの生活にも影響を及ぼし始める。何が言いたいのかというと、外で買った動物などを離したり、植物を持ち帰ったりしないことだ。地球温暖化などの対策のためCO2を減らそうなどという大業なことを言われても、われわれ一般市民には何をしたらよいのかかんたんにはわからない。ゴミをきちんと分別したり、極力生ゴミを出さないように肥料化したり、買っている動物はきちんと死ぬまで世話をする。こうした当たり前に思われることを丁寧に行い、丁寧な暮らしを送ることが大切だと考えている。

 

自然の中で、自然な営みをおくることが大切だということだな。

 

 

まった今度をおっ楽しみに~。ばぁい。