シン・春夏冬広場

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【映画評論】県庁の星は仕事のあり方を僕らに問いかけている

 

 

 

 

あらすじ

織田裕二演じる野村聡は、県庁職員のエース。200億円の行政プロジェクトの発案した。総予算200億円の特別養護老人施設、 ケアタウンリゾート“ルネッサンス”の建設プロジェクト。県庁のエリート街道を突き進む野村にとっては、是非にでも成功させたい事業だった。

 

いわゆる「箱物行政」だ。絵に描いた餅があり、餅に群がる蟻で構成されている。当然反対する人々がいる。市民オンブズマン「開かれた行政を求める県民の会」だ。ケアタウンプロジェクトの実施を元女子アナの知事・小倉早百合と県議会議員の古賀に講義している。

 

野村は県庁で出世することにしか興味がなかった。後輩から生活保護手当の相談を受け、市の管轄だと一蹴する。その上家がなく、住民票がないことが明らかになるとそれでは県に済んでいることが証明できないのに、保護は支給できないと伝える。どうすればいいかを理解しているはずなのに、そっけない態度を取る。

 

あるとき上司から研修のプランをまとめてほしいと相談を受ける。そして、県議会議員古賀と面会した際に、民間意識に留意した研修を行えば、反対運動もなくなるだろうと提案した。その結果野村と選ばれた職員は各民間企業へと半年間の研修に赴くことになる。野村が出向したのは、食品衛生法、消防法の意識が希薄な潰れかけのスーパー「満天堂」。

 

スーパーの職員とは衝突を繰り返しながら、野村は県職員として本来どうあるべきなのかを学んでいく物語。

 

キャスト

野村聡:織田裕二 - 県庁商工労働部産業政策課係長→生活福祉課
二宮あき:柴咲コウ - 満天堂パート従業員
桜井圭太:佐々木蔵之介 - 野村の同期の県庁総務部人事課職員
浜岡恭一:和田聰宏 - 満天堂惣菜担当
篠崎貴子:紺野まひる - 篠崎建設社長令嬢
篠崎威嗣:中山仁 - 篠崎建設社長
佐藤浩美:奥貫薫 - 満天堂販売担当
清水寛治:井川比佐志 - 満天堂店長
浅野卓夫:益岡徹 - 満天堂副店長
北村康男:矢島健一 - 県庁産業政策課長
田畑美香:山口紗弥加 - 産業政策課職員
二宮学:濱田岳 - 二宮あきの弟
来梄和好:ベンガル - 市民オンブズマン「開かれた行政を求める県民の会」代表
小倉早百合:酒井和歌子 - 知事
古賀等:石坂浩二 - 県議会議長

 

原作:桂望実
監督:西谷弘
脚本:佐藤信
音楽:松谷卓

映画に込められたメッセージ

役所に対して求められることはなんだろうか。官僚に求められることと問い直してもいい。官僚というのは、本来国民と政治家の架け橋である。官僚としてやるべき仕事は、国民、市民のためになることをやることである。政治や国家がそれに反する時、官僚はそれを止める役目である。政治家の下請けではないし、そして、国民の狗でもない。官僚は独立しているべきだ。それが行政である。三権分立のうち、内閣を担っている。

 

この区分に関しては市役所だろうが、県庁だろうが実は関係ない。トップが市長、知事に変わるだけで、大まかな仕組みはおなじになっている。よく県庁と市役所の違いはわからないことが多い。それは仕事の内容が似ているためだ。そのため府と市を一緒にしようと持ち上がる。大きな違いは消防は市の管轄であり、警察は県の管轄であるくらいしかわからないことが多い。治水、道路にも管轄があり、いわゆる縄張りがある。この縄張りは正直国民からしたらどうでもいい。住みやすく、税金が低く、子育てがやりやすければ何でも良いのだ。しかし、困ったときに助けてもらえないとなんのために税金を払っているのかわからなくなる。その程度の意識しか国民にはないのだろう。僕自身その程度の理解しかない。

 

はじめの頃の野村は、出世にしか興味がなかった。出世するために満天堂でなにかしらの結果をだしたかった。その方法は、満天堂の社員のためではなく、そして顧客のためではなく、自分のためだった。そのため、その方法はほかからの反発にあい、思うように進まない。助けてほしくても、アドバイスが欲しくても誰からも助けてもらえなかった。

 

自分のための生き方というのは、私生活でも現れてくる。結果として、妻になるはずだった女性を失い、仕事のポストからも外されていく。野村は打ちのめされた。しかし、捨てる神あれば拾う神あり。野村は、二宮あきからスーパーの危機を助けてほしいとお願いされる。

 

野村は何も失うものがなかった。失うものがあるとすれば、スーパーだ。満天堂は食品衛生法に反するような材料の使い回しを行っており、在庫の山が所狭しと積み上げられ、消防法にも違反していた。このまま行けば、営業停止処分は免れない。県職員としての野村は、在庫整理からスタートした。在庫を整理し、食品の鮮度を守れるようにした。その結果消防法にもクリアーする。

 

はじめのころに野村が作ったマーケティングを行った弁当は売れなかった。マーケティングは数字あそびではない。人の行動を理解し、何も言わずとも買ってもらえるようにすることだ。二宮あきから教わった内容を駆使し、これまで助けてくれなかった人々からも野村は尊敬されるようになる。自分から与えないと、人は何も分けてはくれないのだ。野村にとってはこれで良かったんだと思う。これこそが企業であり、組織だ。小さいながらも大きな経験を野村はできたのだと思う。映画であるが、羨ましく眩しく写った。

 

野村はそこから県民のため、市民の声を聞き回るようになる。オンブズマンの元へ行き、市民の声を聞き取った。200億円のプロジェクトに待ったをかけ80億円で実施できると提案する。知事には話を聞いてもらえたが、善処するすなわち実際にはやりませんと回答を得ることになった。野村自身もそのことを理解しており、結果としては何も変わらなかったのだが、どこか満足そうだった。

 

最後のシーンでこれまで無料で市民の税金からコーヒーが作られているので、感謝して飲みましょうという札があったが、それが1杯100円に変わった。非常に小さな一歩だが、大きな前進を果たした。それだけ、職員の意識を野村の言葉が変えたのだと写った。

 

最後に

織田裕二といえば、お金がない、踊る大捜査線が有名であり、やはり同じようなキャラクターを演じている。仕事に一生懸命な男で、どこか不器用でだけど、潔くって清々しい。今回の主人公の野村は確かに織田裕二だ。

 

仕事って僕にとってなんなんだろうって、悩んでいる。日々の糧を得ること、やりがいがあること、妻と子供を養えること、それがいまの僕の仕事の目的だ。だが、それでいいんだろうか。当然顧客のことは考えている。しかし、本当にそれは顧客のためなんだろうか。出世をすることばかり考えていたが、僕は本当に出世がしたいのだろうか。出世して、何になりたいのだろうか、出世して何をしたいのだろうか。なんのために、誰のために働いているんだろうか。そんなことばかりをぐるぐる考えていた。

 

この映画は、僕にとってそういった仕事に対するあり方の1つの答えを提示してくれていると考えている。何かヒントになればいいのだが。

 

ぜひ皆さんも映画を鑑賞してみてください。

 

いや~映画って本当にいいもんですよね。

 

 

 

また今度をお楽しみに!! バイビー!