シン・春夏冬広場

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【映画評論】藤原竜也主演の映画 鳩の撃退法の謎解きに挑戦

 

 

 

 

あらすじ

藤原竜也演じる元直木賞作家の津田伸一。彼はデリヘルのドライバーとして、生活を送っていた。ある時なくなった房州書店の老人から、3003万円の金を受け取る。

 

津田はそのうちの金1万円を散髪屋まえだで使う。あんたの使った金は偽札よ。そこから物語は動き出す。3人家族の失踪事件と裏社会の倉田なる人物を巡る奇妙なミステリーに津田は巻き込まれて行く。津田は、その内容を新作の小説として描いていく。

 

この映画は時間軸がかなりバラバラで、観ている人が過去の話を追っているのか、現在の話を追っているのか、混乱するように作られている。内容は津田伸一が新しく作成した小説の独白と、実際に起きた出来事が入り混じる構成だ。

 

この映画は津田伸一が書いた現実なのか、フィクションなのか。その事実を担当編集者である鳥飼なほみが検証、問いかけることで、物語は深まっていく。

 

キャスト

津田伸一:藤原竜也
鳥飼なほみ:土屋太鳳
幸地秀吉:風間俊介
沼本:西野七瀬
幸地奈々美:佐津川愛美
倉田健次郎:豊川悦司

 

監督:タカハタ秀太

原作:佐藤正午『鳩の撃退法』(小学館刊)

脚本:藤井清美、タカハタ秀太

音楽:堀込高樹

 

映画に込められたメッセージ

movies.shochiku.co.jp

 

この映画は、メインサイトにもあるが、ネタバレを前提としている。作者側の仕掛けた謎に対し、推理をする形式になっている。本通り裏とは作品の中に出てくる裏社会の組織名とおなじになっていて、洒落ている。

 

movies.shochiku.co.jp

 

作品の大まかな流れを説明しながら、謎を考えていきたい。こうした制作側の謎掛けに参加しようと思ったのは、この映画が見れば見るほど謎だらけだからだ。僕は2回映画を見た。1回目は何も考えずに見た。1回目は本当に謎だらけで、面白かったがわけがわからぬという感じ。2回目は問いかけられた謎に対して推理をして、その推理に一致している部分はあるのか、それとも大外ししているのかというのを確認しながら見た。これが結構功を奏して、作品をより深く楽しんで見られた。

 

制作者側の問いかけは以下の3点である。

•津田伸一が書いた小説は、どこまでがホントだと考えるか

•何故鳩の撃退法というタイトルなのか

•幸地秀吉は何故倉田健次郎と一緒にいたのか

 

順を追って説明しよう。

 

物語は時間軸がバラバラで、わざと混乱させるように作られている。そして、津田真一が映画の内容を小説に作り上げていく独白と、事実が入り交じる形で進行していく。津田真一と編集者である鳥飼なほみが話し合いながら、物語が進行していく。

 

津田真一は直木賞をとった作家だったが、以前人の不倫を暴露するような小説を書き、その小説があまりにも現実と同じで、人が自殺してしまったのだろう。そのため編集者の鳥飼は津田真一に対して、本当に書いてはいけないものを書いてませんよねと常に問いかけている。そのくらい、津田真一の作品は一見本当のことを書いているように思えるが、実はところどころ嘘が散りばめられている。

 

まず、1つ目の問から考えていこう。これは事実から追ったほうがわかりやすい。

 

事実は津田真一が鳥飼なほみに伝えたように、3000万円は本物だったこと、3万円は偽札だったこと、倉田健二郎がいること、幸地秀吉がいること、秀吉の奥さんが郵便局員と浮気していること、4歳の娘がいて、秀吉の本当の子じゃないこと、従業員から給料の前借りを頼まれていたこと、妻が妊娠したこと、そして男女がダムで遺体として上がったこと、登場人物、場所だ。編集者の女性と話していること、そして実際に彼女が調べたことそれが事実だ。それ以外は嘘だと考えている。つまり津田真一が独白で語っている内容は、全てフィクションである。

 

そして2つ目の問。

 

鳩の撃退法がなぜそのタイトルなのか。これは僕の思い込みによるところが多いが、鳩は偽札のことである。そしてピーターパンとウェンディがなぜこの物語の中核を担っているのかを想像した。ピーターパンの舞台であるネバーランドというのは、多くの作品で取り上げられている。その際にネバーランドというのは現実逃避の象徴として描かれることが多い。現実逃避とは、どうにもならないことをどうにかしたいということだ。

 

鳩自身を津田が手に入れたのは、津田自身ではどうにもならなかったことだ。そして物語の中の幸地秀吉は、自身ではどうにもならないことをどうにかしたいと考えていた。鳩とは偽札であり、どうにもならないことの象徴の比喩表現だ。つまり、どうにもならないことを撃退する物語なので、鳩の撃退法なのである。事実、津田の偽札は倉田健二郎に返却し、物語上の幸地秀吉は妻と子供と逃げて【きっと幸せになって】いることになっている。

 

鳩を偽札だけで、終わってしまうと、偽札を撃退することになる。ただ、偽札の撃退法だけなら、幸地秀吉の話をする必要はない。TIM【Too Much Infomation】である。つまり、この物語の起点は確かに偽札だけれど、津田真一が書きたかったのは偽札の撃退法というわけではない。鳩というのは何らかの比喩表現だと考えるのは自然だ。

 

最後に3つ目の問。

 

これは男女の遺体がダムから上がった新聞があり、それが鳥飼なほみと一緒のときに津田伸一が目撃している。残念ながら、津田真一が書いた物語のようにハッピーエンドではなかった。浮気していた郵便局員のはるやま、そしてその浮気相手である幸地奈々美は殺されてしまったと想像できる。一家失踪事件は本当に幸地秀吉の家族のこととは書かれていない。鳥飼なほみが作中で知ったのは、沼本と一緒に歩いた際に旦那がバーで働いていたこと、奥さんは劇団員の女優だったことそこまでしか語られていない。一家失踪事件が幸地秀吉という事実はどこにも触れられていない。

 

 

最後に

鳩の撃退法は非常に面白かった。映画はうるう年2/29を起点としてスタートするのだが、うるう年を表現するのに、今年は余計な1日がある。そのときには余計なことが起こると事件があることを匂わせるのは非常に聡明な表現だ。

 

栞【しおり】代わりに金を挟んでいるシーンは、いかにも金にまつわる事件が起きることを匂わせているし、バーの名前も栞だ。出来すぎ。そして端々に出てくる言葉の表現が秀逸。今ある事実から考えて何が自然かと考えると隠された事実が見えてくる。起こるはずがないことが起こっていると妻に告げられた。どうしょうもないけど、どうにかなってくれと思うこと。拍手することで、妖精が死なないのなら、おれもちょっとは救われるかもしれない。こんどはおれも手を叩いてみるよ。どの台詞も小説じみていて、かっこいい。奇跡、そうか奇跡か確かに小説家は絶妙な表現をするというのは悲壮感が漂っている。表現が絶妙すぎて、本を手にとって読んでみたくなる。

 

******5/1追記******

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そういえば、8番ラーメンというラーメンチェーンが映像に写っている。これは金沢が発祥のラーメン屋だ。国道8号線沿いにあるラーメン屋だから、8番ラーメンという。この話を金沢出身の知人から聞いた。そのため、金沢の人は大盛りあがり。ただ、この8番ラーメンは富山にも進出しており、舞台は富山であることが後からわかった。舞台になっているロケ地で、こうした地元のゆかりを知れるというのは本当に面白い。

 

しまったなぁ。このネタは絶対書こうと決めてたんだけど、仕方ない。

 

ぜひ皆さんも映画を鑑賞してみてください。

 

いや~映画って本当にいいもんですよね。

 

 

 

また今度をお楽しみに!! バイビー!