シン・春夏冬広場

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【書評】神・文章術は『呪い』が解ける

僕は悩んでいた。これはブログを書き始めてからずっと悩んでいたことだ。ブログは誰かに文章や情報を届ける作業だ。つまり、読者や問題に悩んでいる人がいて、受け取り手がいることで、必要としている人が僕の文章を読んでくれる。その読者に向けて、文章をしたためなければいけないという一種の『呪い』にかかっていた。

 

この『呪い』を意識するようになったのは、まさしくグルメ記事や手料理の記事を書いていた時だ。常にネタを意識し、スーパーマーケットに行っては何か面白いものがないのか探している。こうした生活によって、あまり意識していなかったものを認識するようになったメリットの一方で、本当に自分がやりたいことに時間をかけられているのかという虚無感に襲われるようになったのである。これははっきりいって仕事をしているのと何も変わらない。やりたくないことに時間を浪費し、本来やらなければいけないことや、やりたかったことをおざなりにする作業である。金をもらっている仕事なら割り切れるが、本来自由であるはずのブログで浪費するのは本末転倒である。

 

神・文章術を読んで、僕はこの『呪い』から解放されるような気がしている。いったん自分を良く見せたいという意識を忘れて、自分のやりたいことをやりたいように表現するのだ。読まれなくたっていいんだ。やりたいことがきちんとできて、そのアウトプットをすることで思考を整理したり、情報収集するのが目的なのだから。それに改めて気付かされた。

 

オルゴナイトを作成したときが一番充実していた。僕は何かを調べて、書かれている通りにやることに嫌気がさしていた。調べれば通り一辺倒の答えの山。どこかで見たような作品や、どこかで見たような考え方。バズった作品や、収益を上げるための方法。何をやっても答えがあらかじめ用意されているような気がして、もうけが最優先。失敗が許されない、失敗は悪であるかのような風潮が正直腹立たしかった。失敗したかった。そのため、オルゴナイトを作ってメルカリで売ってやるぜって息巻いたが、売ることはできなかった。それどころか、大失敗しながら、制作して形にして終わってしまった。しかし、その失敗こそが僕の求めていたものだった。試行錯誤したかった。会社でも久しくやれていない楽しさがあった。充実していた。誰からも必要とされていない試行錯誤だった。フミコさんが言わんとしていることが、腑に落ちた。

 

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本のレビュー

 

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前置きが長くなったが、神・文章術の構成は、1章~6章は文章を作る方法、最終章に実際の文章を作る流れが書かれている。文章の作り方といっても、一般的にみられるような例えばナタリー式トレーニングに見られるような、てにおはなど文章構成のテクニックを紹介しているのではない。その手前の段階である文章を1から作るにはどうすればよいのかという部分が書かれている。これまで文章を書くためのテクニックを紹介するものはあまたあれど、書くものを作る方法を扱っている本はお目にかかったことがなかった。痒い所に手が届く本だ。むしろほとんどの人が、書くものを作る方法が知りたいと考えているに違いない。

 

実際のテクニックに関しては、フミコさんのブログの方にもあまり書かれていないため、そちらは購入して読むことをお勧めする。文章を書くことで得られるメリットはフミコさんのブログにも書かれている通り、自分の考えを整理できることだろう。フミコさんほどでないにしろ、僕も自分が何を考え、何を感じ、何を悩んでいたのかというのはブログで記事を書くことで、より鮮明になってきたように感じる。明日の自分は他人だ。自分のために書くことは、必要な作業と言える。フミコさんの手法としては、外に出すものと内に秘めておくものは別ものとして扱っているため、やはり実際手に取って読むことを勧める。文章における悩みの解放感が得られる。いわゆる『呪い』の解き方が書かれている本だ。読んだ後には、解放感が得られる。

 

この本を知ったのは、フミコさんのツイッタースペースが開かれるということで、参加したのがきっかけだった。少し低めな声で、柔らかい聞き取りやすい話し方が、優しそうな印象だった。1時間ほどだっただろうか。編集者の伊藤さんとフミコさんの掛け合いが漫談のようで面白く、時間が過ぎ去っていった。本に書かれているように本当にガラケーで文章を書かないと面白くないという編集者の話を聞き、笑ってしまった。本当にそんなことがあるのかと。そして、話しているときに地震が起きるというハプニング。話題性に事欠かない方だ。

 

文章というと高尚な印象だが、フミコさんがいう文章は書きなぐりのイメージに近い。書きなぐりより丁寧に自分の考えていること、感じていること、悩んでいることを整理、分割し、先んじて考えることで悩みが解決されることを指していると解釈している。僕がもっとも印象的だと感じたのは、2か所ある。文章を書いていると似たり寄ったりしてくるもので、誰しもが通る道と書かれている部分。そして、初めにも書いているように読者に読んでもらうための文章を考えないという部分だ。自分オマージュがやめられない。知らず知らずのうちに自分オマージュをしていることがよくある。その自分オマージュからの脱却方法が記されていた。そして、ずっと悩んでいた『呪い』だ。自分がやりたいことをやるべきだ。起業の科学の中にも書かれていたように、自分自身のやりたいこと、自分自身の悩みを解決する手段を書くことや実行することが本来やりたいことであり、それを中心にすべきだ。複数の接点のない人が同じことを言っている場合、それは信用した方がいい。

 

フミコさんの文章は、時にクソ上司など悪口が書かれていることが多いのだが、不思議と嫌な印象を受けない。ネガティブなことを文章にすると、暗い印象になって、読みたくなくなることが多いが、悩みをポジティブに受け取っているのだろう。不思議と何度も読み返したくなる。ぜひ読んでみてください。

 

 

〇過去に書いたフミコさんの書評記事

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まった今度をおっ楽しみに~。ばぁい。