シン・春夏冬広場

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盲目なネズミたちの狂乱

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ハーメルンの笛吹き男より引用

ハーメルンの笛吹き男は、笛の音色でネズミを誘い出し、川にネズミを飛び込ませ、根絶やしにした。報酬を請求した笛吹き男に対し、報酬は支払われなかった。もったいないと考えたからだ。激怒した笛吹き男は、再度笛を吹きながら、子供たちを丘の上へと連れ去ってしまったといわれている。

 

この話は実話と言われており、伝承が残されている。何か別の現象の比喩を表しているのではないかと言われている。十字軍遠征であったり、疫病であったりそういった比喩表現の元、子供たちがいなくなってしまったことを表現していると考えられているのである。ネズミは、ペストなど疫病の温床でもある。

 

カルト教団が起こした事件

1997年にヘールボップ彗星が、地球に接近した。その時に事件が起きたのである。カルト宗教団体が、集団自殺を遂げたのだ。宗教団体の名は、ヘブンズ・ゲートという。彼らはヘールボップ彗星が宇宙船であり、その宇宙船に魂を乗り換えることを望んだ。

 

ヘヴンズ・ゲートの信者たちは、地球はまさに「リセット」(一掃、一新、若返り)の時にあり、人が生き残るためには地球から旅立つことが唯一の道だと強く信じていた 。かれらは、「人間」の肉体は「旅」の手助けをする乗り物に過ぎないとしていた。ヘール・ボップ彗星とともにやってくる宇宙船に魂を乗せるためとして、指導者アップルホワイトと38人の信者が自殺を遂げた。

Wikipedia より

 

実際彼らの願いが成就され、ヘールボップ彗星に乗り込めたのかは不明である。少なくとも僕の人生において、魂を星に変換することはできないと考えているため、彼らの目論見は達成しなかったと考えるべきだろう。信者たちはネズミのように教祖の言葉を信じ、川の中に飛び込んだと考えるのが普通である。

 

教祖の言葉には説得力がある。そういった教祖の言葉を信じ、教祖の奏でた音色にしたがい、社会生活を送っている人とは別の常識が芽生える。一般的なルールに従った人間からすると、ある種異常な常識の元彼らは集団行動を開始し、遂行する。僕らの目には三途の川にしか見えなくとも、彼らの目にはオケアノスに見えていることだろう。

 

そうした事件は日本でも起きていることは、ご存じの通りである。アンダーグラウンドは、オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件を記したノンフィクションである。著者は村上春樹氏だ。地下鉄サリン事件の被害者の方から証言を聞き取り、その状況を克明につづった証言文学である。

 

被害者とは別に、地下鉄サリン事件を引き起こした実行メンバーの証言がつづられており、彼らが麻原彰晃に対する感情、実行時の使命感が記されている。湧き上がる疑問を押しつぶし、教理に従って行動したとある。

 

SNSに見るインフルエンサー

インフルエンサーの発信に従って、その日の洋服を決めたり、化粧品を購入する人が増えている。企業はその発信力に目を付け、マーケティングを行い、商品の購買力を向上させる。その流れをせき止めることは難しく、インフルエンサーが黒といったものは白いものでも黒く染まる世の中になってしまったように思う。

 

メンタリストDaiGO氏に見られるように、彼らは信者ビジネスというモデルを作り上げた。どこかで聞いたような話である。教祖に扮したインフルエンサーが理路整然と正しいような強い発言を繰り返し、信者を量産していく。信者は彼らがいったことを真に受け行動に移すのである。

 

信者は逆らうことが出来ない。アンダーグラウンドの中で語られている実行犯、豊田亨の発言を引用しよう。

豊田の心の中では当然ながらそれなりの葛藤があった。それは通常の常識からすれば、あるいはまともな人間の情からすれば、とても容認することのできない非道な行為だった。しかし、帰依する「尊師」からの命令に異を唱えることはできなかった。それはまるで、急な坂道を激しいスピードで転がり落ちていく車に乗り込んでいるようなものだった。そこから飛び出して、来るべき破局を逃れるだけの勇気も、判断力も、彼にはもう残されていなかった。飛び出してから行くべき「逃げ場」もなかった。

村上春樹 アンダーグラウンドより引用

信者は、教祖の発言に盲目的になる。たとえ間違っていると考えても、それを覆すことは難しい。一度取り込まれると、そこから抜け出すことはできない蟻地獄の様相を呈している。彼らを助けることが出来るのは、外から来た人間だけなのである。

 

ハーメルンの笛吹き男の奏でる自分にとって心地の良い音色に従って、ネズミたちは死の舞踏を踊り続ける。気づいた時には川底に横たわっていることだろう。ネズミたちは、自分がネズミであることを忘れている。SNSという幻想の世界にとらわれ、自分で判断する機会を失っている。教祖が善良であるうちはいいが、悪意を持った教祖が誕生したとき、僕らは果たして子供達を守り通すことができるのだろうか。

 

 

まった今度をおっ楽しみに~。ばぁい。