シン・春夏冬広場

楽しいことになんでもやっていこうっておもってますぜ。

NHK100分 de 名著 戦争は女の顔をしていない 第1回 証言文学というかたち 感想

強烈だった。かなり覚悟をしてみていたが、やはり感情が高ぶって思わず涙が止まらなくなる。ただただ、悲しい。簡単に戦争はよくないものだと割り切れない。当然よくないのであるが、戦争や女性が従軍していたことを、残酷だったとか、無意味だったとか単純な言葉では表現できない。なぜなら、彼女たちがその戦争に志願していて、なおかつ誇りに思っているから。自分を表現していいのは、戦争に参加していた人だけである。

 

伝統的なロシア文学の背景を解説しながら、戦争は女の顔をしていないという名著の背後にあるもの、内情すべてを内包している圧倒的情報量に、非常に感銘を受けた。残念ながらロシア文学への造詣はあまり深くない。ドストエフスキー罪と罰を読んだきりだ。

 

ちっぽけな人とおおきい人の見事な対比表現。ちっぽけな人はロシア文学の伝統的な登場人物で、社会的な弱い立場にいる身を寄せ合っている人々。歴史にはこうしたちっぽけな人を表現するような作品はほとんどない。雄大な武将、挑戦的な戦略、圧倒的な勝利。それらばかりが賛美され、歴史に名を遺す。ありとあらゆる人に語られ、確かに僕自身もそうした人々にあこがれを抱いている。

 

だが、そんな人達の歴史は歴史のほんの1部分でしかない。わかりきっている話だが、男性が半分。男性の弱者が8割、女性が半分と考えると、残っている歴史なんて、ほんの10%もない。それが大文字の歴史【男性の書いた歴史】という対比表現で説明されていた。

 

疑問に感じていたことに触れられていて、非常に良かった。漫画しかまだ読んでいないんだが、この作品は非常に作者の存在感が希薄だ。普通だったら私はこう思うという表現が一つでもあるもんだと思っていた。作者が感情や意見をあらわに表現している部分が非常に少ない。もしくは少ないように見えた。漫画だから削られていたのかと考えていたが、これが証言文学という形だということを理解した。そうした素朴な疑問点にも専門知識を交えて解説してくれていた。戦争に関して自分の立場を明確にすることは難しい。著者は女性という立場に関する表明はあれど、戦争に対する言及は鮮明ではないように思う。それだけ難しいということなのか、それとも証言者たちを前面に出し、余計なノイズを入れたくなかったということなのか。

 

やはり取り上げられたが、女性の証言で、なにが一番恐ろしかったかというと、男物の下着で死ぬことだという表現は、やはり胸に来るものがある。まともに画面を見ることができない。ありありとその情景が浮かび、女性の弱さ、辛さを克明に示しているように思う。ありとあらゆる場面で、そういった表現がある。渡河のシーンでも生理の後を残して従軍するよりも、その跡を消すために、死と引き換えに我先に水に飛び込む女性たち。彼女たちの尊厳にかかわる重大な内容だと思う。

 

また伊集院さんのコメントが非常に良かった。包帯をウェディングドレスに仕立てた女性の話である。おそらく小梅けいとさんの本にはまだ出ていない。3巻には乗ると思うが、今のウェディングドレスと比べていいはずがないんです。それがとても素晴らしいものとして映るのは、それだけ物資がなくてどれだけそのささやかな幸せの立体感という表現。とてつもない文学的な解説に非常に感銘を受けた。

 

再放送もされるし、次回の第2回目、そして原作をぜひとも読んでみたい。原作が見つからないんだよなぁ。探してみよう。

 

www.akinaihiroba.com

 

www.akinaihiroba.com

 

まった今度をおっ楽しみに~。ばぁい。